少しずつでもつなげていく
国际日本学研究科長 宮本 大人
国境を越えて人、モノ、情報がボーダーレスに行き交うグローバル化の時代。そこで生きていくための知識と知恵を提供すること。この国际日本学研究科ができたときの理念はこうでした。
それから10年以上を経て、今、世界ではむしろグローバル化に対する反動が、様々な形であらわになっています。武力で国境線を引き直そうとする争いが各地で起こり、SNSには外国人に対するデマやヘイトが大量に流れています。私はむしろ、こうした状況だからこそ、国际日本学研究科が提供しようとする知識と知恵は、その必要性、重要性を増していると考えています。
国际日本学研究科の1学年の定員は博士前期課程が20名、後期課程が5名です。小さな大学院です。それでも、ここには、日本に関心を持つ留学生と、グローバル化がもたらした状況に関心を持つ日本人学生が、日々交流し、それぞれ違う背景を持ちながら、同じ問題について議論し合う時間があります。
「日本人」と一口に言ってもいろんな人がいる、「中国人」も「アメリカ人」も、同じようにいろんな人がいる、そんな単纯な事実を、実感を持って知る一番素朴な方法は、外国人の友达を作ることでしょう。「外国人」をひとまとめに非难する投稿に「いいね」を押す前に、その友达の颜が头に浮かべば、「いや、ちょっと待てよ」と考えることができます。
この研究科では、そんな「いや、ちょっと待てよ」を、どんどん深めていくことができます。兴味は重なるけれど背景は违う人间が、复数集まって、同じ研究室で机を并べて勉强し、同じ教室で颜を合わせて议论し、浓密な时间と空间を共有できること。独学にはない、大学院という场で学ぶことの大きな意味がここにあります。
この研究科を修了して様々な场所で生きていくみなさんは、それぞれの场所で、この研究科で得たものを、伝え、広め、时には「悪い流れ」をせき止めようとする力にもなってくれる。そう期待して、私たちは授业をし、论文指导をし、みなさんの研究环境をより良いものにしようとしています。そして、みなさんの研究から、私たち自身も学ぼうとしています。
絶望的で圧倒的な状况を前にしたとき、一人の人间にできることは限られています。それでも、少しずつでも、人と人を、「ちょっと待てよ」と「ちょっと待てよ」を、つなげていくことができれば、少しずつでも希望は生まれます。
国际日本学研究科が育てようとしている「日本の文化及び社会システムを国際的な視点に立ち理解し,異文化及び多様な社会システムを理解することができる、高度な調査研究能力を有する人材」とは、その能力を自分が「うまいことやって」生きていくためだけに使う人ではありません。「国際的な視点」も、「異文化」への「理解」も、「高度な調査研究能力」も、時に隔てられ、対立する、国と国、人と人をつなげ直すために使われて、初めて意味を持つものです。
その意味を、少しでも多くの次の世代につなげていくために、この研究科はあります。 少しずつでも、何かと何かをつなげていく。その意志を共有できるみなさんを、お待ちしています。
以 上

